プラズマ技術の
プロフェッショナル集団
紫光技研
プラズマテレビの開発者が再結集
世界初の技術でコロナ禍に立ち向かう
2020年の秋も深まる11月末、明石海峡大橋を渡って株式会社紫光技研を訪ねた。
紫光技研のある淡路島は、その温暖な気候から「花の島」とも呼ばれる風光明媚な観光地だ。
ここに、かつてプラズマテレビの開発者として活躍・脚光を浴びたエンジニアたちが再び集い、研究開発の日々を送っている。
「淡路は自然に恵まれた素晴らしい環境です。我々の働き方はワーケーションというのかな。」
そう話すのは「プラズマテレビの父」として知られる、紫光技研顧問の篠田傳氏だ。 篠田氏は大学時代からプラズマテレビの基礎研究に取り組み、富士通入社後もこの研究を続けた。
苦難の日々、しかし不屈の技術者魂
実用化に至るまでの20年間は、2年に渡る闘病生活や研究打ち切りの危機など、苦難の連続だった。
しかし遂に、1992年に行われたエレクトロニクスショーで篠田が率いる開発チームはフルカラープラズマテレビの公開に成功。 薄型大画面のプラズマテレビに世間は驚き、ブラウン管テレビに置き換わる薄型大画面テレビ市場が本格的に幕を明けた。
篠田氏はその後もプラズマテレビ開発のパイオニアとして第一線で活躍。
2005年に富士通のプラズマテレビ製造事業からの撤退を機に、超大型曲面ディスプレイの実現に向けてカーブアウトという形で篠田プラズマ株式会社を設立した。
しかし、電機メーカー各社のプラズマテレビ撤退のあおりを受け、資金調達が困難に。篠田プラズマは2013年に事業を停止した。
「技術には自信がありましたし、実際に世界初の2m×8mなどの超大型曲面ディスプレイを何台も商品化・納入し ました。けれど、プラズマテレビという枠の中では事業資金を集められない環境になってしまった」と篠田氏。
「悔しかったですよ」
紫光技研社長の脇谷雅行氏。富士通時代から篠田氏とともにプラズマテレビの開発に関わってきたエンジニアだ。 脇谷氏はプラズマテレビの専門会社(FHP)で製造部門の本部長を務め、退任後は篠田プラズマ・外部電機メーカーなどで顧問の役職に就いていた。
「私は篠田プラズマが事業停止したころから疎遠になっていたんです。それがいつの間にか新しく紫外線専門会社を作ったというでしょう?訪ねて話すうちに社長をすることになって(笑)」
外部機関での製造マネジメント経験やリーダーシップに期待しての人選だった。
こうしてかつての技術者仲間が集い、 培ってきたプラズマテレビ技術の転用で社会に役立つ紫外線デバイスを生み出したいと結成したのが紫光技研だ。
紫光技研は独自技術であるプラズマ発光方式の水銀フリー紫外線面光源UV-SHiPLA(UVシプラ)を開発した。
コロナ対策に新たな光を届けたい
UV-SHiPLAとは
薄型・低消費電力・低製造コストながら400nmの長波長紫外線から200nm以下の真空紫外線(VUV)領域まで、 自在に発光波長を設計制御できる世界初の新世代面光源デバイスだ。
従来、紫外線波長帯域の光源デバイスには主に水銀ランプが用いられてきた。 しかし「水銀に関する水俣条約施行」に基づき、水銀ランプに替わる水銀フリーの新たな紫外線光源デバイスの登場が強く求められていた。
その社会的需要に応えるべく、紫光技研は水銀フリー紫外線面光源デバイスUV-SHiPLAを世界に先駆けて実用化した。
UV-SHiPLAは、殺菌・消臭の有効性が認められ、2015年からBtoBで様々な医療機関・行政機関・研究機関・企業に採用、実用されてきた最先端デバイスだ。
特筆すべきは、他社の真似できない薄型サイズで短波長の真空紫外線
(VUV)を発生できる点。VUVの強力な化学物質分解能力やオゾン発生能力は、殺菌・消臭用途で様々な医療・産業分野に活かすことができる。
新型コロナウイルスが猛威をふるう2021年現在、 ウィルス感染症への懸念が全世界的に高まっている。
そのような背景のなか、感染症対策として紫光技研はBtoBで実績のあるUV-SHiPLAの除菌効果をBtoCにより直接エンドユーザーの手元に届けて社会貢献したいという想いから、2020年より除菌・消臭用プラズマオゾン発生器の開発に着手した。
今回、紫光技研と合同会社ViiVはエンドユーザー向けプラズマオゾン発生器「ViiV.03(ビーブ・ゼロサン)」を共同開発した。
この製品のコンセプトは「人が生活する全てのくらし空間でかんたん・安全に活用できる除菌・消臭用オゾン発生器」だ。
軽量かつコンパクト、低消費電力であり、水銀を使わず安全性も高い。
さらにViiV.03のプラズマ紫外線によるオゾン発生方式は、他社一般のオゾン発生方式の副産物である有毒ガス(NOx)を放出しない。
ViiV.03のオゾン発生量は、かんたん操作で3モード切り替えが可能
(弱モード1.25mg/h、中モード2.5mg/h、強モード5mg/h)。
自家用車内のような狭い室内から15畳までの広いリビングまで、
人が生活するシーンに広く活用できる。
技術も人も「愛」あればこそ
篠田氏をはじめ紫光技研には、プラズマテレビ開発時代からエンジニア集団として大切にしている信念がある。
「技術は愛」
技術開発は愛情を込めた子育てのようだという。人の道を外れぬよう教育し、やがて社会貢献できるひとかどの人物となるように、期待と愛情を込めて育てる…子育てと技術開発は共通するというのだ。愛の宿らない技術はやがて見放され廃れていく。技術開発は技術者の私利私欲や自己愛のためにあるのではなく、人類社会の夢の実現に愛を込めた技術で応えるためにある。その夢を叶える事ができるのが真のエンジニアなのだ。
今回開発したオゾン発生器「ViiV.03」は、紫光技研エンジニアたちの信念を込めた結晶だといえるだろう。
ViiV.03はBtoC製品としての第1号機。
まだまだ進化を続ける。
紫光技研エンジニアたちは、最先端デバイス開発の合間に敷地内の畑で野菜を作り、花を育て、時には目の前の海で釣りもする。美しい淡路の自然の中で、世界的なエンジニアたちが新しい働き方で日々開発に勤しむ姿に、ポストコロナ時代幕開けに差す一筋の光が見える。
篠田 傳(しのだ つたえ)
篠田プラズマ代表取締役社長、紫光技研 顧問。工学博士。
富士通で世界初のフルカラープラズマテレビを発明・開発した功績から数々の賞・褒章を授与される。
富士通から独立して篠田プラズマを設立し、プラズマテレビ技術を紫外線光源技術に転用したフィルム型発光デバイスSHiPLAを発明。
篠田プラズマからSHiPLA技術を紫光技研へライセンス供与。
- * (社)発明協会, 内閣総理大臣発明賞(2002年)
- * Society for Information Display, KARL FERDINAND BRAUN PRIZE (2003年)
- * 紫綬褒章(2004年 春の褒章)
- * International Electrotechnical Commission (国際電気標準会議), IEC1906賞 (2006年)
- * IEEE Honorary Membership(IEEE名誉会員賞)(2007年)
脇谷 雅行(わきたに まさゆき)
紫光技研 代表取締役社長。製造技術マネジメント、エンジニア人材育成のスペシャリスト。
富士通では篠田傳と共にフルカラープラズマテレビ開発・製造に従事。富士通日立プラズマディスプレイ(FHP)では取締役製造本部長を務める。
退任後は篠田プラズマ、外部電機メーカーでの顧問職を経て
紫光技研 代表取締役社長に就任。
SHiPLA(シプラ)
篠田プラズマがプラズマテレビ技術を転用して発明・開発したフィルム型ディスプレイデバイスの商標。 SHiPLAは他光源が苦手とする超大面積での発光を低コストで実現できる。 2x8メートルサイズの壁面ディスプレイを実用化した。発光波長は赤外線、可視光、真空紫外線まで設計制御できる。
UV-SHiPLA (ユーブイシプラ)
紫光技研の紫外線面光源の商標。UV-SHiPLAはチューブ型発光素子を面状に並べて紫外線を発生させる面光源。完全水銀フリーで真空紫外線発光が可能。真空紫外線は空気中の酸素を乖離して安定にオゾンを発生させることができる。また、紫外線の発光強度をプラズマテレビのように自在に制御できるので、紫外線からのオゾン発生量を安定してコントロールできる。
UV-SHiPLAでの安定したオゾン発生とオゾン量コントロールは他社が真似できないオンリーワン技術である。
代表特許(P2016-225070A)をはじめ、米国、EU、日本、中国、韓国で11件の国際特許取得済み。
合同会社ViiV
ViiVは、紫光技研の持つ技術を世界に発信したい…その想いから誕生しました。各メンバーがこれまで培ったノウハウを活かし、「日本発の世界的技術」を皆さまにお届けします。
宝水 幸代
2014年、ある日突然思い立って専業主婦からフリーライターの世界へ。医療、ビジネスから美容、音楽まで幅広いジャンルでの執筆を行う。イベントMCやピアノ弾き語りなどでも活動中。
会社概要
- 会社名
- 合同会社ViiV
- 代表者
- 北條聖一郎
- 所在地
- 兵庫県明石市大久保町高丘3-11-10
- 加西営業所
- 兵庫県加西市山枝町480-32
- TEL
- 0790-35-9000(平日10:00〜16:00)
- info@viiv03.jp
- 事業内容
- 電子機器の販売